投資ノウハウ

Knowhow

不動産売却時に適用できる空き家特例とは

相続した空き家を売却したときは、一定の適用条件を満たすことで最大3,000万円の控除を受けられます。適用にあたっては、家屋や敷地・売却時期などに関する要件のほか、

空き家特例とは

空き家特例とは、相続した空き家や土地を売却し譲渡所得税の申告を行う際に、課税所得から最大3,000万円を控除できるものとする税制優遇です。令和6年10月現在は、平成28年4月1日から令和9年12月31日のあいだに売却した場合が適用対象とされます。なお、制度の正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。

空き家特例の適用条件

空き家特例を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。これらの条件は、対象となる物件の要件、利用条件に関する要件、そして譲渡期限に関するものです。以下でそれぞれの条件について詳しく見ていきましょう。

対象となる物件の要件

対象となる物件は、区分所有建物でないことが求められます。共有での登記がされている建物には適用できますが、マンションや区分所有登記された二世帯住宅などには適用できません。加えて、建物の建築時期は昭和56年5月31日以前でなければなりません。

建物・敷地の利用条件に関する要件

建物の利用条件には、次の4つの要件があります。いずれも、相続して住む人がいない不動産のみ本特例が適用できるとの趣旨です。

1、被相続人が居住していた家屋であること
2、相続の開始の直前において、被相続人以外に居住していた人がいないこと
3、相続の開始から売却の時まで、居住や事業、貸付けの用に供されていないこと
4、家屋とその敷地の両方を売却すること(更地にして売却する場合も含む)

敷地に関しては、被相続人の居住用家屋の敷地として使われていたことが求められます。敷地の権利の種類は、所有権だけでなく、借地権でも可能です。

譲渡期限の要件

空き家特例を適用するには、相続開始があった日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、対象となる家屋と敷地を譲渡する必要があります。この期限は、相続人が迅速に空き家を処分することを促す目的があります。たとえば、2024年4月1日に相続が開始した場合、2027年12月31日までに売却を完了しなければなりません。

空き家特例のメリット

空き家特例の最大のメリットは、譲渡所得税の大幅な軽減です。通常、不動産を売却する際には、その譲渡益に対して所得税(復興特別所得税を含む)と住民税が課税されます。しかし、この特例を適用すると、最大3,000万円の特別控除を受けることができます。例えば、4,000万円の譲渡益がある場合、特例適用により課税対象額を1,000万円に抑えることができます。これにより、相続人の税負担が大幅に軽減され、相続財産の有効活用が促進されます。

特例による税控除がもたらすもうひとつの重要なメリットは、相続した空き家の有効活用の促進です。放置された空き家は、防犯・防災上の問題や景観の悪化など、地域社会に悪影響を及ぼす可能性があります。この特例を利用することで、相続人は空き家を円滑に売却し、新たな所有者による活用や開発を促進することができます。

空き家特例の申請手続き

空き家特例を利用するには、適切な手続きを踏む必要があります。申請手続きは複雑で、必要書類の準備や期限の遵守など、注意すべき点が多くあります。以下では、申請に必要な書類や手続きの流れ、そして申請時の注意点について解説します。

必要書類と申請の流れ

空き家特例の申請には、以下の書類が必要です:

1、確定申告書
2、譲渡所得の内訳書
3、特例適用住宅等の明細書
4、被相続人の戸籍謄本
5、相続人の戸籍謄本
6、対象不動産の登記事項証明書
7、耐震基準適合証明書(該当する場合)

申請の流れは、まず必要書類を準備し、不動産を売却した年の確定申告期間中に、上記の書類を添付して申告を行います。申告先は、管轄の税務署となります。なお、申請は売却した年の確定申告期限までに行う必要があります。

申請時の注意点

空き家特例の申請時には、以下の点に注意が必要です。

■期限の厳守

相続税の申告期限を過ぎると、原則として特例を適用できなくなります。余裕を持って準備を進めましょう。

■書類のチェック

提出書類に不備があると、申請が受理されない可能性があります。専門家のチェックを受けることをおすすめします。

■共同相続人の同意

売却の段階で、相続人が複数いる場合、全員の同意が必要です。事前に相続人間で合意を形成しておくことが重要です。

まとめ

空き家特例は、相続した空き家の売却を考えている方にとって、非常に有益な制度です。譲渡所得税の大幅な軽減や、相続財産の有効活用を促進する効果があります。ただし、適用条件や申請手続きが複雑なため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることをおすすめします。この特例を上手に活用することで、相続した不動産を不安なく処分することができるでしょう。