不動産売却時にかかる税金はどう計算する?
不動産を売却すると、その利益に対して税金がかかります。しかし、具体的にどのような税金が、いつ、どのくらいかかるのかを理解している人は少ないでしょう。本記事では、不動産売却時にかかる税金の種類や計算方法、さらには税金を軽減できる特例制度までを分かりやすく解説します。
不動産売却時に発生する税金の基本
不動産売却時に発生する税金には、譲渡所得税・住民税のほか、印紙税と登録免許税があります。いずれも、不動産の評価額に応じた課税額となるため、売却対象の不動産の価格に比例した金額が発生します。
なお、不動産売却に関する税金の発生タイミングは税金の種類によって異なります。印紙税は売買契約書作成時、登録免許税は所有権移転登記時に納付します。
一方、譲渡所得税と住民税は、売却した年の翌年に確定申告を行い、その後納付します。具体的には、譲渡所得税は確定申告期間(翌年2月16日から3月15日まで)に申告・納付し、住民税は市区町村からの納付書に基づいて6月以降に納付します。
売却対価に課税される譲渡所得税
不動産を売って得た対価に対して課税される譲渡所得税は、所定の計算で譲渡所得を算出し、不動産の保有年数に応じた税率で計算します。詳しくは次のとおりです。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得とは、不動産の売却対価のうちの課税される部分です。不動産の取得および譲渡にかかる費用を控除して算出するもので、計算式は下記のようになります。
譲渡所得 = 売却価格 – (購入価格+取得時諸費用 + 譲渡費用)
取得費は物件の購入価格や購入時の諸費用、譲渡費用は売却時の仲介手数料や登記費用などが含まれます。また、建物の場合は減価償却費も考慮する必要があります。この計算で求められた譲渡所得に税率を掛けて、実際の税額が決まります。
また、投資用(賃貸用)物件の場合は、所有期間中に減価償却を行っておりますから、売却時の簿価(物件の帳簿上の価格)も加味して計算しますので注意が必要です。
簿価は「購入価格ー減価償却した金額」で計算できます。
譲渡所得 = 売却価格 – (簿価+取得時諸費用 + 譲渡費用)
なお、譲渡所得がマイナスの場合は譲渡税はかかりません。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の違い
譲渡所得税は、不動産の所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分類され、税率が異なります。譲渡所得が同じ2つの事例がある場合、保有期間が長いほうが課税額が安く済むことになります。
■長期譲渡所得(所有期間5年超)
所得税・復興特別所得税 | 15.315% |
住民税 | 5% |
■短期譲渡所得(所有期間5年以下)
所得税・復興特別所得税 | 30.63% |
住民税 | 9% |
不動産の譲渡所得税に適用できる控除・特例
不動産売却時、とくに自宅を売却する場合には、一定の条件を満たすことで税金を軽減できる様々な特例制度があります。これらの特例を適切に活用することで、大幅な節税が可能になる場合があります。代表的な特例をとりあげると、次のとおりです。
マイホームを譲渡した場合の3000万円控除
マイホームを譲渡した場合の3,000万円控除とは、自宅として使用していた不動産を売却した際に適用できる制度です。借地権や家屋を取り壊したあとの土地も適用対象となります。
■適用条件
- 居住している家屋や土地・借地権を売ること
- 居住しなくなった日より3年が経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 譲渡する前の3年間に住宅ローン控除の適用を受けていないこと
- 買主が売主の特殊関係者でないこと(親族など)
■併用に関する条件
……一定の特例制度(買換え特例)を受けるのは不可、軽減税率との併用は可
■控除額
……譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
特定のマイホームの買換えの特例
特定のマイホームの買換えの特例とは、買換えで利益が手元に残った場合に、売却益の課税を将来に繰り延べることができる制度です。具体例を挙げると、1,000万円の家を5,000万円で売って4,000万円の利益が出た場合には、買換えの条件を満たすことで、課税繰り延べを適用できます。
■適用条件
- 売った年の1月1日において自宅の所有期間が10年超であること
- 売った家・買った家ともに日本国内のものであること
- 取得した建物の床面積が50平米以上500平米以下であり、一定の耐震基準を満たすこと
- 令和5年12月31日までの間に古い家を売ること
- 売却した年の年末までに新しい家を取得すること
- 売却した年の翌年12月31日までに居住すること
- 売却金額が1億円以下であること
- 買主が売主の特殊関係者でないこと
■併用に関する条件
……一定の特例(3,000万円控除や軽減税率)の併用は不可
■控除額
……譲渡所得への課税につき、買い換えたマイホームを将来売る時まで繰り延べられます。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
マイホームを売ったときの軽減税率の特例とは、長期譲渡所得の税率をさらに引き下げるものです。具体的には、10年を超える所有期間があるときに適用できます。詳細は次のとおりです。
■適用条件
- 売った年の1月1日において自宅の所有期間が10年超となること
- 家を取り壊す場合、3年以内に売却し、その間に居住以外の用途に供さないこと
■併用に関する条件
……一定の特例(買換えの特例)との費用は不可、3,000万円控除との併用は可
■控除額
……譲渡所得6000万円以下の部分について、通常の長期譲渡所得税率20.315%から14.21%に軽減されます。
空き家の譲渡所得の特別控除
空き家の譲渡所得のと区別控除とは、誰も住まなくなった家を相続し、売却する際に適用できる制度です。
■適用条件
- 相続や遺贈によって取得した空き家であること
- 昭和56年5月31日以前に建築された区分マンション以外の建物であること
- 相続開始の直前において、被相続人以外に居住していた人がいないこと
- 相続開始日から3年が経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 譲渡または建物取壊しまでのあいだに居住以外の用途に供さないこと
- 売却金額が1億円以下であること
- 買主が売主の特殊関係者でないこと
■併用に関する条件
……一定の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例など)との併用は不可
■控除額
……譲渡所得から最大3000万円を控除できます。
まとめ
不動産売却時の税金は、譲渡所得税を中心に様々な種類があり、その計算方法も複雑です。しかし、長期譲渡所得を狙うことや、各種特例制度を活用することで、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。とくに居住用財産の売却に関しては、3000万円控除や買換え特例など、有利な制度が多くあります。不動産売却を検討する際は、これらの税制を理解した上で、賢く取引しましょう。