不動産投資は法人化した方が良い?メリットとデメリット
不動産投資を法人化すれば、税や資金調達のしやすさの面でさまざまなメリットがあります。他方で、事務負担や維持コストの問題が出てくることも見逃せません。本記事で法人化のメリット・デメリットを押さえれば、経営を賢く継続できるようになるはずです。
不動産投資で法人化すべき理由
不動産投資の法人化には、税制面での優遇や資金調達の容易さ、事業の信用力向上、相続対策などのメリットがあります。これらのメリットは、不動産投資の規模が大きくなるほど、より顕著に現れる傾向があります。詳しくは以下のとおりです。
税制面でのメリット
法人化の最大のメリットの一つは、税制面での優遇です。個人事業主の場合、所得税は累進課税制度が適用され、所得が増えるほど税率が上がります。一方、法人税は一定の税率が適用されるため、高所得になるほど節税効果が高くなります。また、法人ではさまざまな経費を計上できるため、課税対象となる所得を抑えることができます。
資金調達の容易さ
法人化することで、資金調達の選択肢が広がります。個人での不動産投資では、主に個人向けローンに頼ることになりますが、法人では銀行融資やビジネスローンなど、より多様な資金調達手段を利用できます。また、法人として実績を積むことで、融資の審査が通りやすくなったり、有利な条件で融資を受けられたりする可能性が高まります。さらに、株式発行や社債発行などの方法で資金を調達することも可能となり、事業拡大の機会が増えます。
相続対策としての活用
不動産投資を法人化することは、効果的な相続対策にもなります。個人で不動産を所有している場合、相続時に高額な相続税が課せられる可能性がありますが、法人化することで相続税の負担を軽減できる場合があります。さらに、経営中の不動産ではなく会社の株式で相続させることで、生前贈与や遺産分割による経営の細分化や資産の分散を防げます。
法人化のタイミングと条件
不動産投資の法人化は、早すぎるのも遅すぎるのも考えものです。一般的には、年間の収入が一定のラインを超えたときや、運用する物件の数が増えてきたときが法人化のタイミングだと言えます。詳しくは次のとおりです。
年間所得が900万円を超える場合
不動産投資による年間所得が900万円を超える場合、法人化を真剩に検討すべきです。これは、個人事業主の所得税率が900万円を超えると33%に上昇するのに対し、法人税率は一般的に23.2%(中小企業の場合は800万円以下の所得に対して15%)と低くなるためです。つまり、900万円を超える所得がある場合、法人化することで大きな節税効果が期待できます。
複数の物件を所有している場合
複数の不動産物件を所有している場合、法人化のメリットが大きくなる傾向があります。これは、複数物件の管理や経営が個人で行うには複雑になりやすく、法人化することで管理の効率化や経費処理の明確化が図れるためです。また、複数物件を所有することで得られる収入が増加し、前述の所得税率の問題も関係してきます。さらに、法人化することで各物件の収支を一元管理しやすくなり、経営判断や将来の投資計画を立てやすくなるというメリットもあります。
事業規模の拡大を計画している場合
将来的に不動産投資の事業規模を拡大する計画がある場合、早めの法人化を検討すべきです。法人化することで、前述の資金調達の容易さや信用力の向上というメリットを活かし、事業拡大をスムーズに進めることができます。また、法人として実績を積むことで、より有利な条件での融資や新規物件の取得機会が増える可能性があります。
不動産投資を法人化したときに生じるデメリット
不動産投資を法人化するときは、メリットに目を向けるばかりでなく、法人化に伴う各種負担の増加や個人保証の問題も注視するようにしましょう。具体的には、次のようなことが言えます。
維持コストの増加
不動産の運用を法人化すると、法人税や法人住民税などの税金、登記費用、社会保険料などが新たに必要となります。また、会計処理や税務申告の複雑化に伴い、税理士や会計士への報酬も発生します。
税理士・会計士の費用は経費に算入可能ですが、事業規模や収益によっては大きな負担となる可能性があります。
事務負担の増加
法人化すると、個人事業主の時と比べて事務作業が増加します。具体的には、決算書の作成、税務申告、社会保険関連の手続きなど、定期的に行わなければならない業務が増えます。また、法人としての各種届出や登記事項の変更なども必要になります。これらの事務作業は専門的な知識を要するため、多くの時間と労力を必要とします。
個人保証の問題
法人化しても、金融機関からの融資を受ける際に個人保証(経営者保証)を求められることがあります。つまり、法人名義で借り入れを行っても、個人資産にリスクが及ぶ可能性があるのです。対策としては、まず法人としての信用力を高めることが重要です。財務内容を健全に保ち、安定した収益を上げることで、個人保証なしでの融資を受けられる可能性が高まります。
副業規定の問題
サラリーマンの方で法人化する場合、お勤め先の副業規定の確認が必要になります。勤務先によっては副業規定に抵触してしまう可能性がありますので、その場合は奥様や親族の方を代表者にしているケースなどもあります。
まとめ
不動産投資の法人化は、多くの投資家にとって検討の価値のある選択肢です。税制面でのメリット、資金調達の容易さ、事業の信用力向上、相続対策など、さまざまな利点があります。一方で、維持コストの増加や事務負担の増加などのデメリットも存在します。法人化の決断は、個々の状況や目標に応じて慎重に行うようにしましょう。